-救済の書-

真実の5章 上天の想い。


 

@月@日 雨

 異臭がする。

 肉の腐った臭い。

 今日も七瀬ちゃんは泊まっていった。最近仲良しで私幸せ。

 

 

@月@日 雨

 目が覚めた時、七瀬ちゃんはベッドの中にはいなかった。朝の準備をしているのだろう。今日もベッドの隣には白姫ちゃんがいた。

「おは、ひめちゃん…」

 白姫ちゃんの眼は冷ややかだった。白姫ちゃんは一言だけ言った。

「七瀬ちゃんと仲いいね」

 仲良く見えるらしい。

 

 

@月@日 曇り

 白姫ちゃんは必要なこと以外はなにも話さなかった。

 なんとなく分かった。これはやきもちだ。私が七瀬ちゃんと仲良くなったことが、白姫ちゃんには不満らしい。

「あたし、ひめちゃんも好きだよ…?」

 白姫ちゃんはこっちを見てもくれなかった。

 胸が痛い。七瀬ちゃんは好きだけど、白姫ちゃんも大好き。どうしていいか分からないので、後ろから白姫ちゃんに抱きついた。

「無許可でさわんないでよ! このバカレヅ娘っ!」

 殴られた。

 バカレヅ娘って私のことらしい。

 

 

@月@日 曇り

 白姫ちゃんは私のことをどう思っていたのだろう。

 昔からずっと一緒だった。

 白姫ちゃんは私のことを多く知っているし、私も彼女のことをよく知っている。

 

 

@月@日 曇り

 白姫ちゃんは機嫌が悪いので私は怖かったから、今日は七瀬ちゃんと遊んでいた。

 今日の七瀬ちゃんとの会話。

「あ、リンカちゃん」

「ん…」

 七瀬がリンカの頬を軽く指で引っかく。頬についていた米粒を取ってくれた。

「はいとれた」

 なんだか嬉しかった。

 

 

@月@日 曇り

 私は白姫ちゃんも好き。

 白姫もきっとそのうち許してくれる。リンカは今七瀬と一緒に歩ける幸福を噛み締めた。

 

 

@月@日 曇り

 白姫ちゃんは今日喋ってくれなかった。

 

 

@月@日 曇り

 白姫ちゃんは今日も喋ってくれなかった。

 

 

@月@日 雨

 白姫ちゃん、やきもち焼いてるみたい。

 私と七瀬ちゃん仲いいから。

 

 

@月@日 曇り

 私、七瀬ちゃんが好き。

 

 

@月@日 曇り

 七瀬ちゃんにちゅーしてみた。

 殴られた。

 

 

@月@日 曇り

 七瀬ちゃんにちゅーしてみた。

 仕方ないなぁって言って許してくれた。

 

 

@月@日 雨

 白姫ちゃん、やきもち焼いてるみたい。

 私と七瀬ちゃん仲いいから。

 

 

@月@日 曇り

 白姫ちゃんは今日も喋ってくれなかった。

 

 

@月@日 曇り

 七瀬ちゃんにちゅーしてみた。

 仕方ないなぁっていって許してくれた。

 

 

@月@日 曇り

 七瀬ちゃんにちゅーしてみた。

 仕方ないなぁっていって許してくれた。

 

 

@月@日 曇り

 七瀬ちゃんにちゅーしてみた。

 白姫ちゃんに見られちゃった。

 

 

@月@日 曇り

 白姫ちゃんに殴られた。

 

 

@月@日 曇り

 白姫ちゃんが変になった。

 

 

@月@日 曇り

 七瀬ちゃんにちゅーしてみた。

 白姫ちゃん、機嫌悪そう。

 

 

@月@日 曇り

 七瀬ちゃんにちゅーしてみた。

 仕方ないなぁっていって許してくれた。

 

 

@月@日 雨

 そう言えば白姫ちゃん、今日は話したいことがあるから、早く帰ってきて欲しいと言っていた。

「りーんかちゃん。どっか遊びにいこっか」

 最近はよく誘ってくれる。

 白姫ちゃんが早く帰って来いって言ってたから、少しだけ遊んでから帰ることにした。

 でも、ちょっと遅くなっただけなのに、白姫ちゃんは家に帰ってもいなかった。

 ぷんぷん。

 

 

@月@日 曇り

 白姫が安心できる言葉をずっと考えていた。

「あたし、ひめちゃんは好きだよ。大切だよ」

 昔何処かで聞いた言葉をリンカは思い出した。言葉で相手を傷つけることは簡単にできる。だけど安心させることは難しい。それでもリンカは精一杯誠意を白姫に伝えた。

「もし、私と七瀬ちゃん、どちらかしか助けられない状況になったら、リンカちゃんはきっと七瀬ちゃんを選ぶ」

「あたしは、ひめちゃんも、大事…」

「どっちかしか選べないなら七瀬ちゃんを選ぶ」

 私はなにも答えることができなかった。無言は白姫ちゃんにとっては肯定と同じ意味に過ぎなかった。

 白姫ちゃんは私を叩きのめして家から出て行った。

 痛かった。

 

 

@月@日 大雨

 白姫ちゃんが昨日から行方不明。

 外へ探しに行った。

 七瀬ちゃんにも手伝ってもらって、一緒に探した。

 非道い話だと思った。七瀬ちゃんと一緒に白姫ちゃんを探す。大好きな七瀬ちゃんと共通の目的と行動を取りたかっただけ。本当は私ひとりで探さないと駄目だった。

 

 

@月@日 大雨

 白姫ちゃん行方不明。

 

 

@月@日 @@@

 @@@

 

 

@月@日 晴天

 白姫ちゃん。

 

 

@月@日 @

 一昨日、家帰ったら天井からヒトがぶら下がってた。

 クビを吊ってた。

 

 

 

 

 手紙が置かれていた。

――これを読んでるということは、私は死んでしまったんだね。綺麗な死に顔をしていますか? ごめんね、リンカちゃん。私はこんな手紙を書くくらいしか自分のことを伝えられなかった。いつもいじめてごめんね。大好きだったよ。どうか私が燃やされる時は傍にいてあげてください。骨もいっぱい拾ってね。

 毎日、ごはん作ってくれてありがとう。私本当は他に生きる楽しみなんかなかった。毎日リンカちゃんをいじめて、泣かせて、それでも愛しくしてあげるのが大好きだった。七瀬ちゃんも好きだった。だけど―――

 

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