-救済の書-

真実の2章 暗黒回帰。


 

@月@日 晴れ

 ジサツするニンゲンは何故死のうとするのか。

 ジサツは『ジサツ準備精神』と『引き金』によって成立すると考えた。心が弱っている時に、なんらかのきっかけがあるとジサツが成立してしまう。

 心が弱っていても、なんらかの『引き金』がなければ、『ジサツへの行動開始』を取ることも少ない。

 今日もいいことなかった。

 日記の書き方を少し改めることにした。

 

 

@月@日

 ジョークを考えてみた。

『おにぎり食べてお寿司と間違うようなコにお寿司はあげません!』

 面白いでしょうか…?

 

 

@月@日 晴れ

 夢を見続けた。

 私は男のヒトが苦手。汚れた感じがするし、男女の関係というものが好きではない。救いようのない両親を見て育ったからかもね。

 七瀬ちゃんは大好きな友達。一緒にいるのは楽しい。

 だけど七瀬ちゃんもきっといつか恋人を作って、私よりもその相手を好きになる。そんなことを考えると悲しくなった。

 それが普通のことでも胸が苦しくなった。

 まとまりのない日記。なんか今日は頭が痛い。

 

 

@月@日 晴れ

 身体が揺すられていた。

 誰かに揺すられ続け、私の意識は徐々に覚醒した。

「起きたー? 遅刻するよ、リンカちゃん?」

 まだ思考の纏まらない脳で目の前にいるのが誰か考えていた。女の子だ。男にこの家の合鍵を渡しているはずはない。

 やっと脳が活性化し始めた。起こしてくれたのは白姫(ひめ)ちゃんだった。

「うぅ…ひめちゃん、おは…?」

「おっは。もう起きなきゃー。ごはん食べてガッコいこ。リンカちゃん、ごはん作ってー」

 白姫ちゃんも親はいない。朝ごはんは自分で作らなければならない。だから毎朝、料理ができる私の家に朝食を食べに来るのだ。

 私は布団を被った。

「今日は眠いからごはん抜き…。ぎりぎりまでねまーす…」

「そんな勝手が許されるわけないでしょーが!」

「ふぁ…?」

 布団を引っぺがされた。冬の強烈な冷気が私の身体を打ちのめした。

 私はそれでも負けずにベッドにしがみ付いた。

「おやすみなさい…」

「ふ、ふーん…? そういう態度とるんだ?」

 こうして私は白姫ちゃんにお仕置きをされることになった。

 お嫁にいけなくなりました。

 

 

@月@日 晴れ

 今日はお休み。

 白姫ちゃんを連れ七瀬の家へと向かった。みんなで遊ぼう。るんたった。

 住宅地区は大通りとは違って静かなものだった。今日は晴天、風も穏やかないい天気だった。

 七瀬ちゃんの家に着いたけど、そこへ行こうとする私は白姫に腕を引かれ止められた。

 脆弱な私の肩は脱臼するかと思った。

「痛ぁ…。なに、ひめちゃん…」

「駄目。見てあれ」

「ん」

 七瀬ちゃんの前に現れたのはクラスメートの男子だった。格好良く、女子にも人気の男子だった。名前覚えてないけど。

 七瀬ちゃんは嬉しそうだった。暫く話し込み、男は七瀬ちゃんの部屋に招かれた。

 七瀬ちゃんは幸せそうな顔をしていた。

 胸がずきずきと痛んだ。息が詰まるような痛みだった。

 その後のことはよく覚えてない。

 

 

@月@日 雨

 七瀬ちゃんとあの男は部屋でなにをしていたのかが気になった。気になればなるほど胸は痛んだ。

 変だな…あたしと七瀬ちゃんはただの友達なのに。

 その友達を他の誰かに取られそう。だから胸が痛い。

 

 

@月@日 雷

 今日も家から一歩も出なかった。

 夕食は白姫ちゃんが作ってくれた。

 今日は泊まりらしい。白姫ちゃんの料理はおいしかった。だけどなにを食べたのかは忘れた。

 ごはんを食べて入浴した。歯を磨いた。寝ることにした。

 今日も一日が終わった。

 

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