-救済の書-
【吐き気の伝説】
敵兵の少女は如何なる拷問に掛けても口を割らなかった。
失う物を持たない少女をどれだけ痛めつけても効果はなかったのだ。
賢者は少女に友達を与えた。
独房の中、少女はその友達と仲良くなり唯一の親友となった。
賢者は少女から友達を取り上げた。
少女は泣いた。
なんでも言うこと聞くから、友達を傷つけないでと泣いて請うた。
飴と鞭なのだ。
友達を与えたのは飴だ。味を覚えさせる。
そして取り上げるのだ。
自国の情報を全て喋ったあと、友達は少女の目の前でクビを刎ねられた。
友達はクビだけになり、もう話すこともできなくなった。
飴は永久に手に入らなくなった。
どうやっても失った飴はもう帰ってこない。
少女は死ぬまで毎日泣き続け、嘔吐を続けた。
死人は生き返らない。
飴はもう手に入らない。
心の扉を閉じた。