-天使のデザイア- 昔の思い出
少女は頭にリンゴを乗せ、ドキドキと緊張し手に汗を握っていた。
「よーし。そこを動くなよー」
「う、うん…」
少年が玩具の弓を構え、頭の上のリンゴを狙う。
「……本当に大丈夫なんだよね?」
「大丈夫だよ。ちゃんとお店のヒトが言ってたんだ。これは狙ったところに絶対当たる魔法の弓なんだって」
幼い頃に読んだ昔話のように、少年も頭の上のリンゴを弓で撃ってみたくなったのだ。
しかし、残念ながら弓はリンゴではなく、少女の鳩尾に突き刺さった。
「がはっ…」
玩具とは言え、人体の急所に直撃を食らった少女は悶絶している。
涙まで流して床の上をのた打ち回っていた。
「ご、ごめん。手元がくるった」
「……」
少女が鬼のような形相で少年を睨んでいる。
結局、少年は少女に怒られた訳だが。
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それもまた、楽しい思い出の一つであった。
思い出はいつまでも残っていた。
幸せであったが故に、失った時の悲しみが価値観を大きく変えた。
ぐるぐると交錯する欲望の渦の中で。