『Archer Ether』 あーちゃーえーてる。弓矢と死者、咆哮と発狂、愚者の祭典。

 四 晴天回帰


 

 

 AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA

 AAAA 弓矢を愛しましょう AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA

 AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA

 

 

 AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA

 AAAA 死んでも生きましょう AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA

 AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA

 

 

 AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA

 AAAA スフレを好きになりましょう AAAAAAAAAAAAAAAAAA

 AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA

 

 

 昔からずっとこの声を聞いて生きてきた気がする。

 神殿から一歩外に出た光景は世界の終末を思わせた。地は割れ、大気中を火の粉が飛び回り、矢のような氷雨が天から降り注ぐ。

 スフレは傘を差し、入り口で待ってくれていた。

「月架ちゃん、いける?」

「うん、準備おっけー」

 ポーチに矢を入れ、背中のリュックサックにも予備の矢をたくさん入れ、ショートボウを腰に掛けた。いつでも叩ける。違う。攻撃できる。

「お兄さんは首都に帰ったんだと思う。オーブを修復しようとしてる思う」

「了解ー。じゃあ首都にいきましょ」

「多分、月架ちゃんは指名手配されてるよ。今、首都にいったら、すごい出迎えあるでしょうねー」

「へーきへーき」

「平気なんだ?」

 スフレはあははっと笑う。昔、スフレとコンビを組んでいた時からよく繰り返された言葉のやり取り。

 全てはAの導くままに。

「……」

 Aは関係ない。全ては己の誇りと、自分達の幸せのために首都が相手でも戦う。

「じゃあ、れっつごー」

 スフレが張り切っているので、はーいと返事しておいた。素晴らしい。

 

 

 首都にいくには山を降りなければならない。

 スフレと二人で歩く道は楽しい。茨の道でも楽しい。抱きつきたくなった。なので抱きついてみる。

「はい、駄目ー」

「あぁっ?」

 さっと身を翻され、月架の身体はそのまま茂みに頭から突っ込んだ。

「いったぁ…」

「あら、大丈夫?」

「なんで避けるのさぁ…」

「やだもん」

 頭を地面に強烈に打ち付けたのだ。不定形の脳みそがぐにゃりと歪んだ。

 

 

 A AAAAAAAAAAAAA  AAAAAAAAAAAAAAAAAAAA

 AAAA @@@ AAAAA  AAAA AAAAAAAAAAAAAAAA

 AAA AAAAAAAAAAAAAAAAAAA  AAAAA   AAAA

 

 

「あ」

「……」

 倒れた茂みの中にワームがいた。

「ぬお?」

「あ、こんにちは」

「あら、お兄さん。こんなところにいたんだ」

 後ろからスフレが覗き込んでいた。

「お前ら、また一緒に行動しているのか!」

 ワームは立ち上がり、右手を上げ呪文の詠唱に入る。手からはいつかと同じ円陣が現れた。

「今度こそお前を塵にしてやる」

 円陣から天使の少女が姿を見せる。指が現れ、手が現れる。そして腕と肩が出てきて、残りの半身も円陣から這い出てくる。

 前回を上回る圧倒的な威圧感、尊厳、偉大、高大な天使。生ある者なら敬うべき対象。大天使よりも更に上を行く天使。

 月架は矢を撃った。

「@@@」

 カツンっと矢は天使の額に突き刺さった。天使はそのままぐらりと倒れる。

「ぬお」

 月架は天使の身体を受け止め、スフレの方に蹴り飛ばした。スフレはそれを受け取り、手刀で天使の胸を突き破って心臓をもぎ取った。

「@@@」

 人工の天使の断末魔の叫びだ。心臓――

 

 AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA

 AAAA または、エネルギーを各器官に送るシステム AAAAAAAAAAA

 AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA

 

 

――を無くせば、どんな生き物も死んでしまう。アーチャーが狙うべき攻撃箇所は常にそこなのだ。

「月架ちゃん、ごめん!」

スフレの手刀が月架の胸の肉を突き破った。

「あああああああああああああああああああああああああああああ」

 指先に続き手首までが胸の中に減り込んでくる。

 ぶち、ぶち……と、月架の肉は千切れ、裂け、スフレの手は心臓へと到達した。鷲掴みされた。

「@@@」

 少しだけど気持ち良かった。今スフレに心臓を鷲みされてるのだと思うと、脳みその中で快楽物質が生成され始める。

「てい! やあ!」

 スフレが掛け声をあげて月架の胸からルーラの作った心臓を抉り出し、もう片方の手に持っていた天使の心臓を開いた胸の穴に捻りこんだ。

「これで大丈夫!」

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 新しい心臓を貰った月架は、まさしく新しい命へと生まれ変わる。

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 随分と簡単に事が運ぶものなんだなって思った。

 

 

五 一線


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