- 世界の底辺 -
プロローグ。
――赤い夕日に彩られたこの世界には、たくさんの『銅の剣(どうのつるぎ)』が突き刺さっていた。
ここはニンゲンの腐った臭いがする。
放課後になった。
だけど、今日も六名の生徒は帰らず、一つの『新しい遊び』に夢中になっていた。窓から差し込む夕日は毒のように鮮やかであり、炎のように美しかった。
「勝ったー!」
「じゃあ、藍那(あいな)ちゃんの負けね」
「むー」
新しい遊び、『銅の剣』に負けた藍那は呻いた。
「無様ねー、藍那ちゃん」
「うー…。弱くてごめんなさい…」
藍那は荷物を片付け帰ることにした。けれど、その手を水架(みずか)に止められた。
「ふぇ? なに?」
「じゃあ罰ゲームしよか〜♪」
「へ?」
「敗者の藍那ちゃんには、楽しい楽しい罰ゲームがあるで〜♪」
――廃車にして歯医者に放り込まれて拝謝される。
にこにこと楽しそうに笑う水架を見ていると、そんな下らない駄洒落が藍那の脳裏を走り抜けた。
「えー…。罰ゲームあるの…? 聞いてない…。帰りたい…」
「だーめ♪ 負けたんやから♪」
「うー。変なことしないでよぅ…?」
罰ゲームと言えばすぐ卑猥な悪戯をしたがる友達がいる。女同士でも藍那はそういうことが苦手だった。
「…………」
激しく不安になった。
「藍那ちゃんはちょうど体操着やなー?」
水架はぺたぺたと藍那の短パンを触る。今日は部活の後、そのまま『遊び』に誘われたから、着がえていなかった。無遠慮に下半身を触られて藍那は身震いした。
「あ、あんまり触らないでよぅ…」
「ごめごめ。ね、みんな、ちょうどいいから、今日の罰ゲームはアレにしよか♪」
水架の提案に他の四人の『誰か』は「おー」と応え、手を挙げた。非道く個性を感じない四人だった。水架に引率される四人の『誰か』が怖かった。
――ニンゲンの腐った臭いがする。
「あ、あの…へ、へんなことしないでね…?」
「だいじょぶ、だいじょぶ。はーい、みんなおさえといてー?」
「ひ…? ちょ、ちょっと…?」
あっという間に藍那は四人の『誰か』に捕まってしまった。一人に一本ずつ、手足を掴まれるこの嫌悪。身体の自由を奪われる恐怖と、四肢を思い思いの方向に引っ張られる 不快感が藍那を半泣きに追い込んだ。
「〜♪」
水架は嬉しそうだった。
「ね、ねえ〜? や、やめよ…?」
「駄目やって♪」
駄目らしい。
藍那は机の上に仰向けに寝かされ、脚をM字に開かされた。両方の膝が胸に付くような、赤ん坊がおむつを変えるポーズを取らされ、藍那は耳まで真っ赤にした。
こんな態勢だと、短パンに包まれたヒップラインがはっきりと見えているに違いない。お尻を突き出すような姿勢が恥ずかしかった。
「ちょ、ちょっと〜…」
「ん♪ なんやー?」
「な、なにする気…?」
「罰ゲームは『カンチョーの刑』やで♪」
「な……!」
絶句した。
(か、かん…ちょぅ…って……か、かんちょー……? え? え…?)
――カンチョー。
男子のやるあのお尻を指で突く悪戯だ。それをやられるというのだ。ありえない。
「や、やあーっ! や、やだー!」
「こら、あばれるなっつーの。抑えといて♪」
「んーーっ! んーーーっ?」
藍那はもがいたけれど、一人に一本ずつ抑えられた手足はじたばたとするだけで、振り解くこともできなかった。
脚が閉じられない。
机の上に寝かされたまま、脚をM字に開かされている。こんな恥ずかしいポーズ、取ったことがない。これだけでも恥ずかしいのに。
「ね、ね? や、やっぱやめよ…? ね…?」
こんなのは非道いセクハラだ。
訴えるような目で藍那は水架の方を見た。
水架は楽しかった。
性と縁のないウブな藍那にエッチな悪戯をできるのだから。それも子供がやるような、カンチョーなんていう男子の悪戯、やったら藍那がどんな反応するのか見てみたかった。
「〜♪」
藍那にはオムツを変えるポーズを取らせているため、お尻の形がくっきりと見えた。
(顔、真っ赤にして……可愛いんだ〜……)
同姓なのにぽーっと胸が熱くなるのを感じ、水架はぶんぶんと首を振った。
(これは罰ゲームなんやから…)
両の手を組み、二本の人指し指をぴんと立てた。
藍那はまだ諦めず、「やだやだ」ともがいていた。
――想いっ切りやった。
「はうっ……」
入った。減り込んだ。
二本の人差し指が藍那のお尻の穴に、短パンと下着を押し込み減り込んだ。
カンチョーが決まると同時、肺から息を絞るような吐息が漏れた。藍那の押し殺された悲鳴だ。
「…っっ! ……っ!」
藍那は羞恥と驚きで顔を真っ赤にして、口をぱくぱくとしている。お尻に強い刺激を受けるのは初めてのようだ。まだ初体験だって迎えていない女の子なのだから仕方がない と言えば仕方ない。
「〜〜〜〜っっ」
カンチョーをされた藍那は目を閉じ、ぶるぶると震えていた。
「藍那ちゃん、可愛いなぁ〜♪」
お尻の穴はぴくぴくと振るえ、水架の指を押し返そうとしている。
「それっ…それっ」
「は…はうっ…?」
押し返そうとするお尻の穴に対し、水架はぐっと指を押し込んだ。その度に、まるで『トコロテン』のように、藍那の口から熱い息が漏れた。
「ふふん。痛くはないようにしてやったんやで?」
「うう〜〜〜っっ」
「ん? かんちょー、きもちいん?」
「……そ、そんなわけないでしょー…ばかー…」
「ふーん。そうなんや?」
水架は意地悪く笑うと、不意打ち気味に藍那のお尻からカンチョーしていた指を引き抜いた。
「はうっ……」
指を抜かれた刺激に藍那は背筋を伸ばして呻いた。
水架はくんくんと藍那のお尻の穴から抜いた指を嗅いだ。
「〜♪ なんか香ばしい匂いやでー♪ 藍那ちゃん、野菜、あんま食べてへんの?」
「〜〜〜〜っっ」
藍那は恥ずかしすぎて泣いていた。
「だいじょぶ。嫌な匂いしてへんから♪」
お詫びにあとでパフェでも奢ってあげようと思いつつ、もう少しだけイジめてみたくなった。
――二発目!
もう終わったと油断し、完全に緊張を解いていた藍那に、水架はもう一回カンチョーをした。
「ひゃうっっ……?」
「痛くないやんな〜? なに、その声?」
カンチョーした二本の指をぐっと押し込むと、藍那はお尻を震えさせて呻いた。括約筋と短パンが水架の指を押し返そうとする。
それに反発するように、指を更に押し込んだ。
「あっ……ああ〜〜〜〜っ」
甘い声だった。
「感じてるん?」
「う、うう〜。そ、そんなわけ…」
指をぽんっと抜いた。
「ふあ……」
藍那が緊張を解く。
水架は今度は指を四本にして構えた。鋭さはないけれど、重みのあるやつを決めようと思った。
「はうっっ?」
ずしんっと四本の指で重いカンチョーをすると、藍那の身体はぶれた。目をぱちぱちとして、水架の顔を見ていた。
お尻にカンチョーをする勢いが強ければ強いほど、藍那の口から漏れる声も大きかった。正しくトコロテン状態だった。
四本の指がずっしりと藍那のお尻の穴に減り込んでいた。まともに入っているのだ。
「気持ちいんやろ? カンチョー」
「〜〜〜〜っっ」
藍那はぶんぶんと首を横に振る。
「強情やなあ」
水架も少し本気になった。
今までは一発ずつカンチョーをしていたけれど、こうなったらもっと非道いことをしてやろうと思った。
指を抜く。
「ふふふ♪」
水架が笑うと藍那はびくっと震えた。またカンチョーをされると思ったのだろう。するけれど、次は藍那の予想を更に上回る方法でやることにした。連続でするのだ。
(よーし…)
水架は息を大きく吸い、そして力一杯、藍那のお尻にカンチョーをした。
「はうっ…!」
段々と慣れてきたのか、藍那の悲鳴は最初よりも小さい。だけど、水架は指をすぐに抜き、第二撃目のカンチョーを決めた。
「ふあっっ?」
さすがにこれは予想外だったのか、カンチョーされた藍那は素っ頓狂な悲鳴をあげた。
だけどまだまだ終わらない。ぐっと指を根元まで押し込んだあと、ぽんっと引き抜き、更にカンチョーを続けた。
「ひああっ」
何度も続けた。カンチョーする度に藍那はお尻からびりびりとした刺激が脳天まで走り抜けるのか、黄色い喘ぎ声を上げている。
続けた。カンチョーを続けた。藍那のお尻の穴から四本の指の抜き差しを繰り返す。
「…あっ………あんっ…あうっっ……あうぅ……!」
水架は藍那の顔をじっと観察した。その間もカンチョーの動きは止めず。
「あっ…はぁっ……はうっ……」
カンチョーされる度に熱い吐息を漏らしていた。
顔が赤いけれど、それはさっきまでの赤さとは違う。上気して高潮しているのだ。
「はう…はうっ……」
悲鳴じゃない。カンチョーされた藍那が漏らしているのは喘ぎ声だった。
「気持ちいいんやん?」
藍那はぶるぶると首を振る。
「じゃ、このままカンチョーでイくかどうか、試したげる」
「へ…? はうっっ…?」
水架の宣言の意味を頭で反芻しようとする藍那のお尻に、水架は容赦なくカンチョーを決めた。
――カンチョーでいかせる。
そんなもので絶頂を迎えたら、ウブな藍那のプライドはどうなってしまうのだろう。
それが知りたくて何度も何度もカンチョーをした。
「だ、だめ……も……だめ……」
段々と藍那の息が荒くなってきた。目を閉じ、ぐっとなにかに耐えているようだった。
「も、もう…だめ……」
「なにがもうだめやの?」
水架は分かった。カンチョーをされ続け、藍那の中で「なにか」が高まっているのだ。
指の動きを止めずに水架は聞いた。
「いきそうなん?」
「〜〜〜〜っっ!」
藍那はもう首を横に振る気力もない。
目を閉じ、歯を食いしばってカンチョーに耐えている。もう、あと少しで絶頂を迎えてしまうのを、なんとか押さえ込もうとしている。
実は水架はこの連続カンチョーの際、まだ力を思いっ切り出していない。最後の一発は藍那の我慢の壁を突き破って、絶頂させてあげようと温存してあった。
(いくで〜〜)
連続でしているカンチョーの動きは止めない。
この最後に一発強く決めるカンチョーは、『不意打ち』で打ち込まれた時、一番お尻に響くのだ。
大きく息を吸い、そして水架は今までで一番強いカンチョーを藍那のお尻に決めた。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっ?」
タイミングも完璧だった。
水架の指は短パンを押し込み、根元まで藍那のお尻の穴に減り込んでいた。
「……っっ」
お尻に突然強烈なカンチョーをされた藍那は、指を差し込まれたままのお尻をびくびくと震わせている。いや、身体を震わせていた。
「……あ……ふぁぁ………」
震えている。
「藍那ちゃん、カンチョーでいったんや♪」
「……っ」
顔を真っ赤にしてぶんぶんと藍那は首を振っている。
「おまけ♪」
「んあっ……?」
駄目押しにとお尻に根元まで差し込んだ指を、反動をつけてぐっぐっと力を込めた。
「あ…あん……」
「指ぬくで?」
「あ…? あんっ?」
ぽんっと指を抜いた。短パンはまだ藍那のお尻に減り込んだままだった。
もう一度匂いを嗅いだ。
「ふふ♪ いいにおーい」
藍那はぐすぐすと鼻を鳴らし、ばかぁと呻いていた。
「む」
「はうっっ!」
ばかと言われたお礼に、最後にもう一発カンチョーをした。
完全に脱力していた藍那のお尻には、またもやカンチョーがまともに決まった。お尻と身体をびくびくと震わせている。再び絶頂を迎えたようだ。
「藍那ちゃん、やーらしいんやなー♪」
「う、うう…」
『四人のトモダチ』は先に帰った。
水架は藍那と一緒に学校の門を出た。傾いた陽はまだ沈んでおらず、赤く世界を彩ったままだった。
水架は夕日によって長く伸びる影が大好きだった。
「お尻、大丈夫?」
「…………」
藍那はつーんとそっぽを向いた。完全に怒っている。
「ごめごめ。なんかおごったるから♪」
「知らないっ」
ぷんぷんと怒った藍那は早足になり、水架をおいてさっさと帰ろうとする。
「あ、藍那ちゃん」
「う?」
「お尻のとこ、毛がついてる」
「え? どこ?」
藍那は立ち止まり、お尻に手を回すけれど、もともとないゴミが取れるはずはなかった。
「うちがとったげる♪」
「あ、おねがーい」
完全に無防備な藍那。
水架は藍那の後ろに回ると、油断しているお尻にカンチョーをした。
「はううっ?」
飛び跳ねるように藍那は悲鳴を上げた。
「あははははははは♪ 藍那ちゃん、あったまわるー♪」
「へ、へんたい〜〜っ」
「えー。藍那ちゃん、これでいったくせにー。みんなに聞いてみる? どっちがヘンタイかって」
「い、いってないも……」
ばかばかと水架の胸を叩く藍那を宥め、二人は家へと向かった。
赤い夕日はいつまでも沈まない。
この無数の銅の剣が突き刺された世界は『止まっている』。
新しい遊びの銅の剣。
剣の一斉射出。
この壊れた世界。
ここはたくさんの歪みと無念の世界だった。