『偽シャングリラ 〜この世でたった一人、善と愛を語れる勇者様〜

 終焉 都市長の部屋 身も心もイヤです


 

 

 

 

 私は撃ちまくりました。

 この建物の中にいるのは悪魔ばかりでした。巣窟っていうんですね、こういうの。

 私。分かったんです。なんとなくですけど悪魔と人間の違いが。

 なんとなく、勇者様のお仕事が分かった気がします。

 悪魔は邪悪です。

 しっかりと確実に息の根を止めないとダメです。

 私は大悪魔の部屋を目指して突き進みました。

 あんまり関係ないけど、テレビという機械を知っていますか?

 つけると“こまーしゃる”というのが流れるんです。コマーシャル。

 キリンさんとはそこであいました。

 ゾウさんともそこであいました。

 

 勇者様とは現実で会いました。

 私にはテレビでみた空想のキリンさんやゾウさんよりも、ここであった勇者様の方が大切です。

 

 だから、家に帰ってテレビを見たかったけど、私は勇者様の意志を次ます…………じゃなくて、継ぎます。

 

 ちゃんと勇者様の意思を継ごうとしてるので、私は大丈夫です。

 大丈夫=ばっちり=問題なし

 

 問題なしです。

 

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「あ!」

 廊下の途中にエアコンがありました。

 ブォーンと低い音を鳴らして空気を吐き出しています。

 私には分かります。

このエアコンは、元々はただのエアコンですけど、今はただ空気を吐き出す機械ではなく、私に空気を解して複雑な暗号を送ってきます。

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これは勇者様の指令です。

私はエアコンに向かって息を吹き返しました。

エアコンは私が指令を受け取った事を理解し、勇者様に返信してくれたでしょう。

 

 

 大悪魔の部屋です。

 頑張ります。

「ヒィ」

 大悪魔が怯えた声をあげています。演技でしょうか。

 部屋の中にいた大悪魔を護るかのような悪魔達が私に銃を撃ってきます。

 六人いました。

 弱かったです。全員やっつけましたo

 

 

「ヒィ」

 また怯えたような声をあげています。大悪魔は初老のおじさんっぽい姿をしていました。

「私は亡き勇者様の後を継ぎ、大悪魔であるあなたを始末しにきました! 覚悟してください! あなたを撃ち殺します!」

「イヤアアァアァアァアアァアァアア―――――――――――――!」

 大悪魔は奇声を発しています。なにか様子が変です。キリンさんとゾウさんが、私の知らない間に先に大悪魔を攻撃したのでしょうか?

「た、助けてくれ! 何なんだ、オマエはぁ! 勇者とか悪魔とか撃ち殺すとか何なんだ! お、俺は悪魔じゃない! し、信じてくれ!」

 言ってる事が破綻してます。『勇者とか悪魔とか撃ち殺すとか何なんだ!』とか言いながら、『俺は悪魔じゃない!』なんて言ってます。

 本当にこの人は悪魔なんでしょうか?

 わかんないです。

 私が撃ち殺した人は悪魔だったんでしょうか?

 そこら辺に転がってる死体をみました。

 人間……ですね……。

 私は人を撃ってしまったですか……。

 どうしてこの人たちを悪魔だなんて思ったんでしょう?

 キリンさんは何処にいったのでしょうか?

 ゾウさんもいません。二匹とも戦死してしまったのですか?

 わかんないです。

 私はなにをしてたのでしょう?

 さっきまでの私は変だったです。

 私はあのお兄さんになにをされたのでしょうか? どうして、こんな妄想に捕らわれたのでしょうか?

 変です、私。

 なんでこんな大それたコトしてるんでしょう。

 今、ここにいることにリアリティがないです。さっきまでしてた行動の実感がないです。まるで夢をみているみたいです。

 夢なら大丈夫です。問題なしです。

 

 でも、すごく悪い事をしてしまった気がします。

 夢なら覚めて欲しいです。

 

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 部屋に備えられたエアコンがブォーンと低い音を鳴らしています。

 

 あ。

 分かりました。

 これは敵の罠です。

 

「部屋にエアコンを置いていたのがあなたの大失敗でしたね!」

「ヒィィ―――――――――――NANDATO?」

 

 エアコンがまた私に勇者様の指令を複雑に暗号化して送ってきます。

 私はエアコンに複雑な暗号化した息を吹き返しました。

 エアコンは全てを理解し、勇者様に返信してくれる事でしょう。

 

 危なかったです。

 もう少しで敵の術中にハマるところでした。

 

 

「私は勇者様の意志を継ぎ、あなたを撃ちます!」

「ヒィ―――――――――――KOZAKASIIWA」

 

 気付いたら私の隣には勇者様が立っていました。

 よかったです。無事だったのですね。

 キリンさんもいました。

 逞しいゾウさんもいました。

 

 

 勇者様が銃を構えている私の腕に手を添えて下さりました。

 私の腕、震えてたんです。

 もしかしたら関係ない人を撃ってしまったのでは、という恐怖に。

 勇者様の手は暖かくて、私の振るえを止めてくださりました。

 私は勇者様とキリンさんとゾウさんと一緒に銃を構え、そして四人の力を一緒にして撃ちました。

 大悪魔は滅びました。

 

 

 私の隣には勇者様がいます。

 左側にはキリンさんがいます。もう一つ左にはゾウさんもいます。

 

 世界は赤く染まっていました。

 赤いのは悪魔達です。

 まだまだいっぱいいるみたいです。

 

 

 私は妄想に取り付かれているのでしょうか?

 そうかもしれないです。

 でも、今確かに私の隣には勇者様がいます。触れれば温かいのです。

 

 なにが正しい事かなんて誰にも分かりません。

 世界中の九十九パーセントの人が正しいと思ったコトでも、絶対にそれが正しいという保障なんて何処にもないのです。本当に正しいコトなんて、この世界を作った神様がいると仮定するなら、その神様と、神様と中の良い人にしか分からないのです。

 

 

 私は勇者様が好きです。

 勇者様を信じます。

 

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 あ、勇者様がそっと耳打ちしてくださりました。

 勇者様、神様のお友達らしいです。

 知りませんでした。

 

 私の前に階段が現れました。

 天に向かって続いています。

 神様の国に通じてるそうです。

 

 

 私は神様の世界に招待されました。

 よかったです。

 

 頑張ります。

 

 

 

Ruler chaos 〜ルーラーカオス〜

『偽シャングリラ 〜この世でたった一人、善と愛を語れる勇者様〜』編 完


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