○物語の展開方式・序章サンプルストーリー

 

 

 コンセプトは特殊、しかしストーリーのテーマは王道とします。

 変わった話ながらも、読者の共感を得るためです。

 具体的な序章のサンプルストーリーを構築してみました。

 

 

【序章サンプルストーリー】

 ニンゲンは魔王の恐怖など忘れ、同じニンゲン同士でいがみ合って生きていました。

 世界の外れにあるパルプンテ神殿にいるカリンも、魔王のことなど昔話でしか知りません。カリンは師匠の下にて多くのことを学び、またレイスや村人達と笑い、遊び、心豊かに暮らしていました。カリンはレイスのことが好きなのですが、レイスの男性への苦手意識を考慮してしまい、打ち明けることができません。レイスはカリンの気持ちを全て知っているのですが、カリンとの関係を維持していたいので何も言えません。

 

 魔王が蘇ります。

 パルプンテ神殿の唯一の神官長、すなわちカリンの師匠は常に100兆の未来を計算しています。故に魔王復活の危機を誰よりも早く知ったのです。そして各神殿へその旨を伝えたのですが、ニンゲンは小神殿の老神官の言葉などに耳を貸しませんでした。永い月日の前では魔王の恐怖も忘れられていたのです。

 それでも魔王は蘇ります。師匠はたった一人でも魔王と戦う覚悟を決めました。何故なら平和を守ることが、勇者様が呪文に託した願いだからです。

 魔王は自分を封印した勇者様達を憎んでいます。しかし、勇者様はもういません。魔王の標的はかつて自分を倒した呪文や特技を受け継ぐ神殿となりました。

 世界のニンゲンの腐敗ぶりを魔王は哂いました。そこに師匠は立ちはだかります。魔王と神官長との戦いが始まりました。

 魔王は復活して間もなく、かつてのような強力な力は未だ目覚めていません。本来ならば師匠は七手先のパルプンテにて勝利を得ることができていました。

 しかし、戦いの騒ぎを聞きつけ、村に滞在していた『ギラ神殿』のまだ若い神官長と数人の神官が戦いに混ざってきました。彼らは力を満足に発揮できない魔王を討ち取り、名を挙げようと考えたのです。ただ、ニンゲン同士は上手く連携を取ることができませんでした。手柄を焦る余り、戦況は不利になっていきます。それを見逃す魔王ではありません。魔王は一瞬の隙を突き、辺りを燃え盛る炎で焼き払いました。たくさんのニンゲンが死にました。師匠はカリンとレイスを庇い、傷つきました。

 ギラ神殿長は部下のある女の子(ギラ神殿長の恋人)を庇っていました。その女の子を魔王は掴み上げ、ギラ神殿長にいいました。

「この女が大事か? 助けて欲しいか?」

 ギラ神殿長は首を何度も縦に振りました。

 魔王は今度は倒れている他の女の子の部下達を指しました。

「あの女共もお前の部下か? 助けて欲しいか?」

 ギラ神殿長は少し迷いましたが、部下の笑顔を思い出し、首を縦に振りました。魔王はにやりと笑って言いました。

「では、助けて欲しいやつ1人以外を、お前の手で皆殺しにしろ」

 ギラ神殿長は魔王に許しを請いました。己の命はどうなってもいい。ただ、どちらの女の子達も助けて欲しいと。魔王は駄目だと言いました。

 女の子達はおびえています。誰も一言も言葉を発しません。師匠もギラ神殿の女の子が人質に取られているため、動けません。

 ギラ神殿長は血の涙を流しました。許してください、と。魔王は駄目だと言いました。

 ギラ神殿長は苦しみながらもベギラマ(ギラの上級呪文)を唱え、恋人でない女の子達を焼き殺しました。しかし、それでも魔王は許しませんでした。カリン達3人も殺さなければ駄目だと言いました。

 ギラ神殿長が襲い掛かってきました。

 師匠がそれに応戦します。2人の神殿長の力はそう変わりません。ギラ神殿長は勝利するために、卑怯な手段を使います。カリンとレイスはそれに気づき、ギラ神殿長を止めようとしますが、逆にベギラマを放たれます。師匠は2人を庇いました。師匠の身体が呪文の炎に焼かれ、燃え上がります。助けようとした師匠に逆に助けられてしまったのです。

 師匠は最期にこう言いました。

「決して怒るな。氷のように冷たい精神を持ち、確実に勝利へと手を進め、大切な者を守れ」

 そう残し、師匠は息絶えました。

 ギラ神殿長は雄叫びを上げてカリン達に向かってきます。しかし、カリンは師匠の教えてくれた『冷たい計算』により、これを撃破します。魔王は気づきました。カリンは師匠をも超える可能性を持った脅威であると。

 魔王は捕らえていたギラ神殿の少女を殺しました。そして、危険な危険因子と判断したカリンを確実に殺すべく、襲ってきます。

 カリンには2手先のパルプンテまでしか制御できません。2手のパルプンテを放ちます。しかし、それでも魔王を倒すことはできません。カリンに残された手はありません。

 もし、たった一つ残されているとすれば、それは禁じられた制御できない『3手目のパルプンテ』です。しかし、これは己の命が危険に晒されても使ってはいけない禁じ手です。何故なら、未知の未来の中には守ろうとした村人などを巻き込む恐れがあるからです。魔王はより勝利を確実にするべく、レイスを人質に取りました。先ほどのギラ神殿長の時と同じく、カリンに命じます。命令の内容は『自害せよ』でした。

 カリンはレイスのためなら死んでもいいと思いました。ギラ神殿長の気持ちもわかったのです。しかし同時にレイスも殺されるだろうということが予測できました。だから、その条件は呑めませんでした。

 禁じられた3手目のパルプンテを使います。

 慌てる魔王、止めるレイス。しかし、カリンは例えどんな未来が待っていようとも、レイスが殺されるよりはまだマシ、パルプンテの世界で言う『期待値が上』と判断した、もっと言えばレイスが死なないのなら、どんな代償を払っても良いと願ったのです。カリンの思考を司る不幸の論法、即ち『バッドラック・ロジック』がそう判断したのです。

 木が死に、動物が死に、村人が死に、それだけでした。魔王とカリンとレイスは生き残りました。

 カリンは絶望しました。魔王は哂い、カリンに止めを刺そうとします。カリンは諦めかけましたが、レイスの声を聞き、また師匠の言葉を思い出しました。

 また誰かが死ぬかもしれない。レイスが死ぬかもしれない。それでもカリンはパルプンテと叫びます。

 カリンは倒れました。

 パルプンテで自分が死んだか、と魔王は哂いました。そしてレイスを殺そうとします。その背を見せた無防備な魔王に、カリンは斬り付けました。魔王は倒れました。カリンはパルプンテを唱えてなどいなかったのです。遠にマジックパワーは使い果たしていました。パルプンテ士の戦いとは、パルプンテの全てを利用します。熱くならず、常に冷静になり、期待値を考慮し、守るべき者を守り、そして、パルプンテを熟知する。パルプンテ士とは、パルプンテの名が持つ恐怖や安堵をも利用する知恵と勇気の結晶です。

 カリンはパルプンテを唱えずに勝ちましたが、それもやはりパルプンテの勝利と言えるでしょう。

 魔王は逃げました。力を蓄え、世界を支配するために。障害の可能性となる、カリンを殺すために。

 カリンにはもう帰る神殿も、皆のいる村もありません。カリンのパルプンテにより、ここは死の村となってしまいました。カリンは苦しみますが、それでも安堵している自分がいます。皆死んでしまったけれど、レイスだけは死なずに済んだからです。その感情そのものをカリンは嫌悪します。カリンは3日3晩泣き続けました。自己を嫌悪しているカリンをレイスは抱きしめました。失ったものは戻ってきません。それでも二人は互いに守りあうことを誓ったのです。

 カリンとレイスは魔王を追います。師匠の敵を討ち、そしてなるべくなら彼の愛したこの大地を守るために。

 

 

 

 

 以上が序章のストーリーです。

 パルプンテという呪文は期待値を元に考えるため、どうしても『命の大きさ』を数値で考えざるを得ないシーンがあります。例えば村人全部の命とレイスの命、などです。これは作品コンセプトの1つなので、パルプンテ以外のシーンでも活用します。たとえば、ギラ神殿長は部下の女の子1人のために、他の部下を全て犠牲にしました。また、もっと極端なことを言えばニンゲンは生きていく為に動植物を糧とし、魔王はニンゲンの苦しみを糧とします。

 そういった生命の価値をじっくりと考え、そしてカリンやレイスはたくさんの死を乗り越え、成長していく物語です。

 

 

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