○物語サンプル・世界観・価値観設定
この物語のテーマは常に能動的であったカスが、ナユと接するうちに自ら道を選ぶようになり、己に誇りを持ち、己を好きになっていくことです。
以下にそのためのサンプルストーリーを用意しました。
ルナデンパはストレスに押し潰されたカスが、月の天使と出会うことにより物語が始まります。
月の天使はブラスターという必殺技をカスに授けてくれました。これは指先から光線を発射するもので、民間人程度なら当たると死にます。
この力の源ですが、それはストレスです。
溜まったストレスをブラスターとして放つことにより、ニンゲンを殺すことができるのです。この力のおかげでカスはストレスを発散することができるようになりました。ストレスが溜まるとそれを発射し、ニンゲンを殺すことにより解消します。
しかし、カスはこの力に取り付かれてしまいました。
本来はストレスを解消する手段であったブラスターですが、カスはこの溜まったストレスを凝縮し、発射してニンゲンを殺す快楽に溺れてしまいます。
そのために意図的にストレスを溜め続ける人生を歩み始めました。
より強力なブラスターを放ちたいと願うカスは、不幸の谷底へと落下していきます。
幼馴染のナユはそれを哀れみました。
ナユもまたストレスを極度に溜め、月の天使と出会った者ですが、彼女はその力に溺れませんでした。適切なストレスを解消する手段としてブラスターを用いています。
ナユは今のカスは嫌いです。
悪に染まったカスが嫌いなのではありません。何一つ、自分の意思で行動せず、月の天使に導かれるまま、主体性も誇りもなく行動を続けるカスが嫌いなのです。ナユがカスと険悪になったのも、カスが日常において何一つ自分からは行動を起こさないからです。誇りを持っていないからです。カスは何もやりたくないからニートになりました。ナユはニートであることを選びました。ナユは自ら選んだ選択には自覚と責任を持っています。
ナユは今のカスは嫌いです。しかし、それでも哀れだとも思いました。
手段が目的となり、自らの幸せを放棄して惰性で生きているカスに、ナユは最後の慈悲を与えるつもりで立ちはだかりました。
カスはナユのことが嫌いというよりもコンプレックスの対象でした。小さい頃からナユはいつも自分の一歩前を歩いていました。頭が良いと言われた中学時代のカスも所詮は2位でした。1位にはナユが君臨していたからです。同じニートという立場でもカスとナユではその有様は大きく違います。
また、劣等感の他にも憧れと恐怖もありました。ナユだけは他のニンゲンと違い、カスという個人を見てくれていました。だからこそ、そのナユに否定されることが怖かったのです。
カスはずっとナユの背中を見て歩いてきました。
ナユに哀れまれるのだけは我慢がなりませんでした。ナユが哀れみでカスを止めるというのなら、カスは己の足で戦うことを初めて選びました。月の天使ですら予測してなかったカスの自我の目覚めは、ナユにより導かれました。
こうして、カスとナユのブラスターを用いた戦いが始まりました。
駄目ニンゲンだった2人の戦いは壮絶であり、しかし、茶番じみた殺し合いでもあり、悲しいものでした。
戦いはナユが勝利しました。
カスは涙を流しました。無敵の力を手に入れたにも関わらず、女の子1人に勝つこともできなかった自分をますます情けなく思い、しかし、それがまたストレスを呼び、敗北しているにも関わらず、ナユとの戦いを続けようとします。
不幸に捕らわれたカスは死ぬまで降りることのできないゲームを始めてしまったわけです。
それでもナユには勝てませんでした。
ナユはもうカスに情けをかけませんでした。その情けがカスを追い詰めていると分かったからです。幼馴染のカスを徹底的に叩きのめしました。
カスは敗北しました。
ナユを相手に全力で暴れたことにより、ストレスは抜けてしまいました。敗北の屈辱も流した汗の前に消えていきます。ストレスがなくなったので、今回はもうニンゲンを殺すことはできなくなってしまいました。しかし、それは苦痛ではありません。初めて思いっきり暴れることができ、胸がすっとしたのも事実だったのです。
カスはまた部屋に帰ります。
ストレスを溜め続けます。
ナユはいつでも相手になってくれると言いました。
カスとナユは似た者同士です。しかし、同時に真逆の部分も併せ持っています。それ故に相手を強く意識してしまうのです。
カスはナユにはもう負けたくないと願いました。もう無様な格好は見せたくないと願いました。
この日からカスは自ら意図的にストレスを溜めることもなくなりました。
ナユも少しだけ、胸をほっとなでおろしました。本当はカスのことが嫌いではありません。できるなら幸せになって欲しいとも思っています。
カスはそれからもナユに何度も戦いを挑みました。
何度やってもカスはナユには勝てません。それでも諦めませんでした。なにか一つでいい、ナユに勝ちたかったのです。ナユも戦いの申し入れは全て受けてくれました。
まったく勝てないことに卑下していると、ナユに注意されました。以前のナユはカスを叱ることもなかったけれど、今のナユはカスに対し小言が増えてきました。けれど、それは世間の嫌味などとは違い、カスは素直に頷くことができました。
やがて時代は流れます。
ある3人はニートの中でも特別視されるようになりました。3人は『ニートの英雄(ヒーローニート)』、『弱者の救世主』とまで呼ばれました。
それがカスとナユ、そしてもう一人の謎の少女『ルナ』です。同じく月の天使に導かれ、ブラスターを使う者です。
3人にそれぞれ賛同する者も増え、やがて派閥が出来てきました。カスは
『もうニンゲンに危害を加えるのはやめよう、ニンゲンには誇りがある、それは自分だけでなく、相手にもある。互いに認め合って生きていかなければならない』
と言います。ナユとの戦いで学び、彼女とは違う考えですが、彼女と接することによりカスなりに出したものです。
一方、ナユは
『好きなようにしていたら良い、積極的にニンゲンを殺す必要はないけれど、なにも遠慮することはない、自然なようにやりたいようにしていたら良い』
と言います。
そして、第3の英雄ルナですが、彼女は
『社会は未だ完璧ではない、苛めや差別があるのはこの世界を司る支配者のシステムが間違っているから』
だと言い、今の世界をひっくり返そうとしています。ブラスターを使い、好き放題ニンゲンを皆殺しにし、この世界を根底から変えようとしています。
派閥の違う3人は敵同士でした。ただ、カスはよくナユのことを思い出します。
そこにある少年が現れました。
少年は生きることに苦痛を感じていました。けれど、カスやナユ、ルナのようにブラスターを得るほどのストレスを抱えているわけでもありませんでした。
少年はカスによく懐きました。カスも少年を弟のように可愛がりました。今まで自分が殺してきた者のことや、誤った道に進んだ時、幼馴染の女の子に叱られたことなどを話しました。
カスは身体を患っています。膨大なストレスが内臓を痛め、死が近づいていました。今の世界を滅茶苦茶にしようとするルナをこのまま放っておけないため生き長らえてきましたが、それももう限界です。
カスには恋人も子もいません。
だから、この男の子には伝えられるものを伝えたいと思いました。男の子にはカスなりに学んだ哲学や価値観、または楽しい雑談をたくさんしました。
カスは時々思います。
己はこの考えに至ったことが遅かった。もっと早く誇りを持つことができていたのなら、あるいはもっと良き人生を送れたかもしれない。カスはこの男の子が自分と同じにならないよう、道を誤らないよう、たくさんのことを教えました。ナユがカスに色々と教えてくれたのも、そういう気持ちだったのかもしれません。
死の日を悟ったカスはルナに最後の戦いを挑みます。勝てる見込みはありませんでした。しかし、その戦う様は少年に見せたかったのです。
カスにとってはルナもナユも価値観の違う相手ではありますが、少年には己の死後、ナユの所に行くように残しておきました。
主人公は変わり、カスの意思を受けついた2代目の英雄がルナや、全てを惑わした月の天使と戦います。
以上がルナデンパのサンプルストーリーです。
細部はまだまだあれど、テーマとコンセプトが出る代表的なシーンは以上のものです。
ここまでお読み頂き、ありがとうございました。